2026年1月16日、防衛省・統合幕僚監部は、2025年度第3四半期までの緊急発進(スクランブル)実施状況および直近のロシア海軍艦艇の動向、さらに高知県沖での災害派遣について一斉に公表した。これらを総合すると、中国・ロシアによる軍事活動が「質の異なる段階」へ移行しつつある現状と、それに対応する自衛隊の多重負荷が浮き彫りとなっている。
1. 一線を超えた挑発:中国軍機によるレーダー照射
最も衝撃的な事実は、2025年12月6日に発生したレーダー照射事案である。 太平洋上で中国海軍空母から発艦した「J-15」戦闘機が、スクランブル対応中の航空自衛隊F-15戦闘機に対し、火器管制レーダーの照射を断続的に行った。これは攻撃直前の動作であり、偶発的な衝突を招きかねない極めて危険な行為である。
2. スクランブル状況:中国機が約7割を占める
2025年度第3四半期(4月~12月)の緊急発進回数は合計448回。
- 中国機: 約68%(304回)
- ロシア機: 約29%(130回)
特に南西航空方面隊での対応が287回と全体の過半数を占めており、沖縄周辺での圧力が常態化している。さらに中国の無人機や爆撃機が沖縄本島―宮古島間を頻繁に通過し、太平洋への進出を繰り返している。
3. 中露の連動とロシア艦艇の周回
中露の連携も深化している。昨年12月9日には、ロシアのTu-95爆撃機と中国のH-6爆撃機が日本海から東シナ海、太平洋にかけて長距離の共同飛行を実施した。 また、年明けの2026年1月12日から15日にかけて、ロシア海軍ヴィシニャ級情報収集艦が、対馬海峡から与那国島・宮古島の接続水域を通過し、太平洋へ抜ける動きを見せた。これは日本列島を周回するように情報収集を行っていることを示唆する。
4. 平時における災害派遣(SAR)
こうした軍事的緊張の最中である1月16日、高知県室戸岬南方沖で韓国籍の自動車運搬船から乗員が行方不明となる事案が発生。海上保安庁からの要請を受け、海上自衛隊第1航空群(鹿屋)のP-1哨戒機が捜索救難活動(災害派遣)に出動した。
【総括】
自衛隊は、中露による「ハイブリッドな威嚇(レーダー照射、共同飛行、情報収集)」に対して24時間体制で警戒監視を行いつつ、同時に発生する海難事故への人道的な対応も余儀なくされている。現場部隊にかかる負荷は、かつてないレベルに達していると言える。