私は先日、三谷幸喜さんが監督と脚本を手がけた『大空港2013』を見ました。これは2013年にWOWOWで放送されたドラマなんですが、空港が舞台のワンシーン・ワンカット作品です。最初はイレギュラーな状況にちょっとワクワクしていた竹内結子さん演じるグランドスタッフが、一筋縄ではいかない乗客たちに振り回されていく様子が、見ていてとても面白かったです。
基本情報
『大空港2013』は、2013年12月29日にWOWOWのドラマWとして放送されました。監督と脚本は三谷幸喜さんで、2011年の『short cut』に続く、ワンシーン・ワンカットドラマの第二弾です。主演は竹内結子さん。他に香川照之さん、神野三鈴さん、池松壮亮さん、生瀬勝久さん、オダギリジョーさん、戸田恵梨香さん、梶原善さんなど、豪華なキャストが勢揃いしています。松本空港を貸し切りにして、天候不良で急遽着陸した乗客たちとグランドスタッフのドタバタが描かれる、約105分の作品です。この作品の撮影は、早朝の空港を貸し切り、9日間でリハーサルと撮影を繰り返し、最も出来の良かったものが放送されたそうです。
予期せぬ着陸と、訳あり乗客たちに振り回される空港スタッフ
物語の始まりは、天候不良で羽田に着陸できなかった飛行機が、急きょ松本空港に着陸するところから。竹内結子さん演じるグランドスタッフの大河内千草は、普段とは違う状況に、どこか少しワクワクしていたように見えました。でも、そこに降りてきたのが、一筋縄ではいかない「訳あり」な家族たち。父親の不倫、母親の怪しい金銭トラブル、娘の年の離れた恋人、息子の役者への夢、そして祖父の秘密。それぞれが隠し事を抱えている田野倉家の人々に、千草は次々と巻き込まれていきます。私も見ていて、「ああ、これは大変だぞ」と、千草に感情移入してしまいました。
みんなが秘密を抱える、三谷幸喜らしい人間模様
このメインの家族、田野倉家の人々が、みんな何かしらの秘密を持っているというところが、本当に三谷幸喜さんらしいな、と思いました。完璧な人間なんていないし、家族の中ですら隠し事がある。その人間的な面白さや滑稽さを、三谷さんはいつもユーモラスに描いてくれますよね。そんな中で、竹内結子さん演じる千草は、空港という場所で、まさに人のプライバシーに聞き耳を立てる立場。彼らの会話に半ば強引に首を突っ込んだりしながら、物語を動かしていく役割を担っていました。彼女のちょっとおせっかいだけど、どこか憎めないユーモラスなキャラクターが、それぞれの秘密を繋ぎ合わせていくのが面白かったです。
個性豊かなキャスト陣が織りなす「愛すべきバカ」たち
登場人物が多いこの作品ですが、それぞれが強烈な個性を放っていました。香川照之さんのどこか憎めない父親、神野三鈴さんのほのぼのとした雰囲気で家族の悩みに巻き込まれる母親。特に神野三鈴さんの持つ**「ほのぼのした感じ」**は、深刻になりがちな家族の問題に、絶妙なユーモラスな空気を与えていたと思います。オダギリジョーさんや戸田恵梨香さん、生瀬勝久さん、池松壮亮さん、石橋杏奈さんといったキャスト陣が、それぞれのキャラクターを見事に演じきっていました。
そして、この作品を見て、私は「人間って愛すべきバカなんだな」と強く感じました。誰もがどこか滑稽で、自分の都合や秘密を抱え、時に周りを巻き込んでしまう。でも、その「バカさ」は決して憎むべきものではなく、むしろ人間らしさや一生懸命さ、あるいは弱さの裏返しなんです。三谷幸喜さんは、そんな人間の「バカさ」を、愛情たっぷりの眼差しで描いているからこそ、私たちは彼らの滑稽さに笑いながらも、どこか共感し、最終的には「愛すべき存在」だと感じてしまうのでしょう。
また、個人的な話になりますが、私は長年、青木さやかさんに対して苦手意識がありました。しかし、この作品での彼女の起用は、全く嫌悪感を抱かず、むしろ物語のバランスに貢献していたように感じました。彼女の演じる松本空港の案内係・砂田かおるは、竹内結子さん演じる千草の話し相手として、要所で良い味を出していましたね。彼女の存在が、この密室劇のような空間でのやり取りに、また別の面白さを加えていたと思います。
松本空港という限られた空間でのワンシーン・ワンカット撮影は、俳優さんたちの演技の地力が試されるものですが、本当に素晴らしかったです。まるで舞台を見ているような臨場感で、彼らのやり取りをじっくりと堪能できました。この作品は、多くのキャラクターが複雑に絡み合いながら、それぞれの人間味が浮き彫りになっていく様子を、とても丁寧に描いているな、と感じましたね。
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