Prime Videoの自動再生で偶然流れてきた『あん』(2015年)は、重い題材を扱いながらも、静かな優しさと寄り添う眼差しで描かれた作品でした。ハンセン病の差別や隔離政策はときどき報道されますが、この映画は過酷な歴史をただ告発するのではなく、ひとりの人生に寄り添い、その中でこぼれる言葉や笑顔を丁寧に描いています。特に樹木希林さんと実の孫・内田伽羅さんの共演は、血のつながりを超えた温もりを感じさせるものでした。
作品情報
『あん』は2015年に公開された映画で、監督は河瀨直美。主演を務めるのは樹木希林で、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子らが共演しています。上映時間は113分で、Amazon Prime Videoをはじめとする配信サービスで視聴可能です。
ハンセン病と隔離政策の歴史
かつて原因も治療法も分からなかったハンセン病は、長年にわたり差別と隔離政策の対象とされてきました。その後、感染力のほとんどない病気だと判明してもなお、強制隔離や結婚の制限、家族との断絶など、過酷な状況が続けられた歴史は、今も傷跡として残っています。
『あん』が描く静かな人生と寄り添い
この映画は、その歴史を大きな声で告発するのではなく、元患者の徳江が丁寧に餡を炊き、「小豆の声を聞くんです」と語る姿を通して、観る者の心に静かに訴えかけてきます。どら焼き屋店主との交流や、餡を通じて交わされるささやかな言葉のひとつひとつに、過酷な過去と今を生きる力が宿っています。
樹木希林と孫・内田伽羅の共演
劇中では樹木希林さんの実の孫・内田伽羅さんも出演しており、家族ならではの自然な空気感も本作の魅力のひとつです。ふたりの共演シーンには、役柄を超えた温もりがにじみ、静かな感動を呼び起こします。
報道と映画の描き方の違い
報道では「国と患者の対立構図」が強調されがちですが、『あん』はそうではなく、どんな過去でも誰かと関わり、静かに日々を営む姿に寄り添った映画です。声を荒げずとも、その静かな余韻と優しさが、観る者の心に深く残る一作でした。