はじめに:その「憤り」、本当に転売屋だけに向けられるべきか?

マクドナルドのハッピーセットが、一部の人に買い占められ、ネットで高額転売されている。テレビでは子どもが悲しそうな顔で「本当に欲しい人のところに届かない」と訴える。世間は「転売屋は悪だ」と声を揃えるが、私はどうにも、その単純な構図にひっかかってしまう。

「公平な機会が奪われる」というが、中古品を売買する古物商や、土地を転売する不動産業者と、一体何が違うのだろう? 法律違反でないなら、モラルは低くとも個人の自由ではないのか? むしろ、対策を怠った企業側の努力不足ではないのか?

この記事は、「転売屋は許せない」という感情論から一度離れ、その問題の本質と、本当に向き合うべき課題はどこにあるのかを、私なりに考えてみた記録である。

「転売」と「中古品売買」の決定的な違い

まず、私が一番疑問だった「古物商や不動産売買と何が違うのか」という点。 これには明確な違いがあった。それは、市場の機能を正常に働かせているか、意図的に破壊しているか、という点だ。

  • 中古品や不動産:これらは供給が限られており、時間の経過で価値が変わる。業者はその価値を評価し、欲しい人に再流通させる「市場の潤滑油」の役割を担う。
  • 今回の転売:一方で、ハッピーセットのおもちゃは、発売直後の一時的な品薄状態を、人為的に作り出している。市場を独占することで価格を吊り上げ、本来、多くの人が正規価格で買えたはずの機会を根こそぎ奪っている。

これは、市場の機能を助けるどころか、正常な市場を意-図的に破壊する行為だ。天候不順で米の価格が上がるのとは、わけが違う。なるほど、多くの人が感じる嫌悪感の正体は、この「意図的な市場の破壊」にあるのかもしれない。

企業の「努力不足」と消費者のやるせなさ

では、その市場の破壊行為を、私たちはただ指をくわえて見ているしかないのか。いや、そんなことはないはずだ。

  • コンサートチケット:業界の努力と法律(チケット不正転売禁止法)により、電子チケットや本人確認が徹底され、不正転売は激減した。
  • Nintendo Switch:任天堂が、粘り強い抽選販売や受注生産、出荷量の調整を続けた結果、市場は正常化した。

こうして見ると、今回の問題は、転売屋のモラルの低さだけを責めても意味がないことが分かる。本当に欲しい人に商品を届けるためのシステム(例えば、アプリ会員限定の抽選販売など)を構築するという、企業側の努力が不可欠なのだ。それを怠った結果、消費者が悲しい思いをしている。このやるせなさが、問題の根底にある。

「必要な人」と「法律」の限界

テレビで子どもが言う「必要な人」とは、**「本来の価格で、純粋に楽しみたいファン」**のことだろう。しかし、その想いだけでは、転売はなくならない。

そして、法律も万能ではない。現在、法律で明確に禁止されているのはチケットの不正転売だけであり、それ以外の商品転売は、原則として合法だ。たとえ反社会的勢力の資金源になっている疑いがあっても、行為自体が合法である以上、警察は介入しにくい。

まとめ:私たちが本当に向き合うべき課題

ここまで考えてきて、私なりに一つの結論が見えてきた。 転売屋を感情的に批判し、そのモラルを問うだけでは、何も解決しない。

問題の本質は、一部の人間が利益のために、多くの消費者がいる「正常な市場を意図的に破壊している」点にある。 そして、その破壊行為を許してしまっている**「企業の対策不足」「法律の限界」**こそが、私たちが向き合うべき、より大きな課題なのだ。

企業には、自社の商品とファンを守るための、より賢明なシステム作りを。そして社会には、チケット以外にも、生活必需品など、本当に守るべき商品の公正な流通を守るための、新たなルール作りが求められているのかもしれない。

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